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Channel: 趣味の部屋
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雪崩(東映東京1956年)

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雪崩
 
 山本薩夫監督が東宝争議後、メジャーの会社で撮ったのは「こんな女に誰がした」(1949年)以来のことである。一貫して独立プロの苦しい資金繰りで映画製作をしていたが、これは珍しく東映で撮った作品である。
 
 世評、山本作品としては失敗作の部類との烙印が押されたものだが、実際は如何に、である。主人公の医師は地主階級で理想を胸に、農地解放にいち早く取り組もうとする。しかし、反社会的と見なされ応召されてしまう。そのはけ口を女中に求めて妊娠させてしまう。戦後、娼婦になったその女と再会。世の中は基地招致で町が二分されていることを背景に、その女は主人公の元を去って行く。
 
 あらすじはこんな感じだが、やはり何とも中途半端な作劇になってしまい、世評通りではあった。独立プロ作品同様の生硬さもある。敵役が類型的であるし、さらに主人公の煮え切らない態度も共感しにくい。一方で民生風の青年たちもとって付けたような感じである。
 
 米軍基地設置に反対するというメッセージだけが言いたかったことなのか。それもやはりとって付けたような感じではある。ただ、山本監督は北海道を舞台にした映画をよく撮っているなと思った。戦前の「田園交響楽」や「リボンを結ぶ夫人」そして本作があって、10年後には「氷点」がある。似たような風景が出てくる。

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