遠山の金さんというと、テレビでは盛んに製作され、放映されてきた。そのテレビが普及する前は片岡千恵蔵が戦前から当たり役の一つにしてきた。既に30年代の日活時代からあるから相当に古い。この作品ではまだ北町奉行にはなっておらず、作品の後半になって、将軍から遠山家の家督相続を許され、北町奉行に就任するいきさつが語られる。東映時代にはそうした頃のエピソードがかなりあって、それぞれの作品が時系列的に製作された訳ではない。
何本か千恵蔵の金さんを観ていると、評定の場でもろ肌を脱ぐシーンはあるが、もったいをつけるのか、脱ぐのをためらうところがある。この作品でも刺青をしていることは、ほめられたことではない。以後、肌を見せてはならぬと将軍から釘をさされている。だから、この作品でも脱ぐのをためらうのである。また、悪人も同一人物とは気付かないのがミソになっている。テレビで中村梅之助などが評定の場で威勢よく脱ぐのを観てからのもので、最初は戸惑ったものである。
共演は千原しのぶ、片岡栄二郎や進藤英太郎といった東映専属の馴染みの役者の他、入江たか子や佐々木孝丸が出ている。戦前の日活多摩川の名優だった小杉勇は当時東映専属であったようで、この作品を含めて結構東映時代劇に出演しているし、黒澤明監督作品の常連の渡辺篤も金さんのや退屈男のシリーズに出ていると改めて確認できる。