何度となく観た作品だが、出演した司葉子らのトークショーが上映前にあった上映会で改めてスクリーンで鑑賞できた。当時、司は25歳で青春の真っただ中で反省もずいぶん多いと語っていた。緊張で撮影時に卒倒したというエピソードも披露された。
さて、内容は「晩春」のヴァリエーション。その時、娘役だった原節子が親世代になり、従来父と娘の話が母と娘の話になったところが少し変化のあるところ。ただ、ここでは核家族化の進行や老後問題などの深刻化しつつある事項がそれとなく描かれている。大方はヒロインたちの亡くなった夫の悪友たちのユーモラスなやりとりに目を奪われがちだが、今観ると深刻な問題の提示であることがよくわかる。
家族と雖もやがて別れが来てバラバラになってゆくというのは晩年の小津監督のテーマでもあった。最後、一人アパートで布団の上に座って寂しそうにする母親の姿がこの映画の全てであろう。