谷崎潤一郎の同名小説の映画化。この小説は3度映画化されているが、本作はその最初の映画化である。谷崎が戦時中も書きついできた作品の連載が終わった直後の映画化で、原作の余韻もまだある頃の映像化でもある。
さて、原作も読んだが、専ら高峰秀子扮する四女の妙子が話の中心になっていて、原作とはずいぶん印象が違って見える。原作では次女の幸子が中心だったように思うが、かなり引っ込んだ印象だ。また長女の夫は殆ど出番がないという感じだ。1983年の市川崑監督版はもう少し姉妹間の葛藤があったような気がする。長女の夫も入り婿の卑屈さがよく出ていた。ところが、この版は話が通り一遍の印象が濃かった。