増村保造監督が「兵隊やくざ」以来、久々に勝新太郎と組んだ作品。父親の違う妹を溺愛するやくざの組員の男の悲劇を描く。当の妹はそんな兄を鬱陶しく思い、破滅的になりかけるが、ぎりぎりで救われていく。
やくざ映画ではあるが、東映のそれとは全く異なり、異常な性格の人間の破滅を描くところは如何にも増村監督らしい。どうやら前年の「女体」と同じようなテイストのように感じる。兄の妹を見る目は近親相姦的であり、近づく男は容赦なく痛めつけることを信条にしている。最後に妹と結婚しようとする青年にやっと託そうとした時は死地に向かう途中である。やっと、普通の人間らしい感情になった時、既に死を覚悟している風であった。
その昔、歌舞伎町にあった歌舞伎町松竹という映画館で近日上映ということでポスターが貼ってあったので、その存在を知った。もう30年も前のこと。いろいろと古い作品は観ていたが、この映画は当時あまり関心が向かなかった。リバイバル後、10年経過していなかったのと、やくざ映画に対する先入観があったからだった。今、増村監督を見直す時に、これは外せないと思うようになった。製作当時、大映の屋台は傾きかけていた。ライバルの市川雷蔵は既になく、芝居を離れて勝新太郎も何かヤケッパチになっているような風に見えてしまった。そんな複雑な思いも感じられる作品だが、ラストのテンポはさすがにいい。尚、相手のやくざのボスは橋本力という俳優だが、彼は大魔神とのかかわりあいのある人で、大魔神の眼はこの人のものだったという。