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Channel: 趣味の部屋
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伊豆の踊子(西河克己・ホリ企画制作1974年)

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伊豆の踊子 1974.jpg
 
 川端康成の同名小説の5度目の映画化作品。その度に、女優の登竜門とも言われた素材だった。田中絹代(1933)、美空ひばり(1954)、吉永小百合(1963)、内藤洋子(1966)それにこの山口百恵(1974)である。監督の西河克己は吉永小百合でも撮っているので、二度目のメガホンである。
 
 西河監督は、新たに劇団民藝の若杉光夫に脚本を任せているが、基本は旧作の日活版を底本にしているように見える。吉永版では大学教授(宇野重吉)の回想形式をとっているが、ここではその教授は登場しないが、同じ宇野重吉が「私」という立場で語る。その「私」とは三浦友和扮する川島のことである。
 
 本作は山口百恵の主演第一作ではあるが、実際は素人同然なので周囲の助演者に助けられているという感じである。その意味では一座の頭である一の宮あつ子や中山仁らが大いに映画では貢献した形になっている。そして弱者への愛情にも似た視線は旧作同様、西河監督の持ち味なのだろう。どちらかという地味ではあるが、時代考証はしっかりとした印象の作品ではある。オイチニの薬屋(これは千家和也が特別出演で扮している)の服装やカフェで流れる流行歌の音声など大正時代の雰囲気が濃厚であった。
 
 なお、東宝系で公開されているが、使用スタジオは日活のスタジオであったという。脇役を見ると全て日活で稼働していた俳優であり、スタッフも日活のそれだった。隣ではロマン・ポルノが撮られていたという状況なのだろう。

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