セシル・B・デミル監督は壮大なスペクタクルを得意とする人だった。宗教的な内容もエンテイメントの素材にすぎないような印象も少なからずあった。
この「十誡」はデミル監督が1回目に撮りあげたサイレント作品のほうである。有名な海が割れるシーンもちゃんとある。ただ、意外だったのは誰も知るモーゼの登場する古代の話は前半のみで、それを敷衍させた現代の話のほうに重きがおかれている。壮大な古代なシーンとは打って変わって、やや平凡なメロドラマになってしまっている。大工の兄弟がいて、兄は実直、弟は商才があって抜け目がない。弟の仕事ぶりは不誠実なものばかり。ずる賢く立ち回るといった手合いで、やがて兄弟の行く手180度異なってしまうという内容だった。信心深い彼らの母親がどうもモーゼの話を読み聞かせるといった構成のようではあった。
よく知られているカラー・ヴィスタで再映画化した作品は古代編のみ。オールスター・キャストなのは周知の通り。現代編がいささか中途半端であることをデミル監督は反省したのかもしれない。