資料には10月8日公開とある。これは増村保造監督の第2作にあたるもので、早くも若尾文子と出会っているということになる。この後、この女優をいろいろな役につけた多くの傑作を撮っていくのだった。
さて、この映画は源氏鶏太の小説の映画化である。さわやかな青春喜劇といったところか。もっとドロドロしたものがあるのかと思ったら、サラリと軽く流すような感じの物語である。やや予定調和的なドラマになってしまって、調子抜けしたが、喜劇の試みということなのだろう。そうはいっても、登場人物は早口だし、じめじめした日本的な情みたいなものを排した作風はやはり新鮮に感じる。イタリア映画の喜劇みたいな筋運びは、当時としてどれだけ受け入れられたのだろうか。生みの母親との出会いもかなりアッサリと処理されていた。同じ大映の母ものとはずいぶん異なる。