久々に「牡丹燈籠」を観る。この暑い中、少しはスーっとなるかと思ったら、一向に効果はない。
さて、この映画は社会派の山本薩夫監督の作品。「白い巨塔」や「戦争と人間」の監督がこのような怪談映画を撮っていたとは当初驚いたが、社会の矛盾の結果によるということに話を組み立ている。幽霊よりも、主人公に死んだ兄の嫁と結婚せよと親族に迫られるが、そういう連中の方が数段恐く見える。その兄嫁も無表情で恐い。
ただし、お露役が赤座美代子がやや魅力不足で残念。当時は文学座の新人だったと思う。もう少し艶っぽい方が良かったように思う。多分、前作「ドレイ工場」で芸者役で出演していた流れでの起用だったのではなかろうか。
山本薩夫監督としては、不本意な作品だったようで、悩む姿をスタッフは目撃している。ただ、緩急を交えた演出は流石にプロで、時折ユーモラスなシーンも織り交ぜて映画を仕立てている。