関川秀雄監督が「きけ、わだつみの声」に続いて取り上げた戦争テーマの作品。今回は終戦に至るまでの秘話を庶民の側面と政府中枢の側面とを二元的に描こうとしている。前作が京都撮影所だったのに対し、これは東京撮影所での製作である。
さて、どうしても15年後に東宝が制作した「日本のいちばん長い日」との比較になってしまう。東宝の岡本喜八作品は専ら政府中枢の話に集中し、終戦の詔勅を天皇自ら録音したレコードを巡っての攻防に重点が置かれてたいへん緊迫感のあるものだった。しかし、この東映作品は総花的であって表面をなぞったようで、緊張感は全くないのが最大の欠点である。まだ、詳細な資料が揃わなかったのかもしれない。憲兵を始め、軍人は概ね悪人として描かれているのも気になる。
サンフランシスコで講和条約が締結され、占領が解かれた直後に公開されたものだが、真相を伝えようとする意気込みだけは伝わった。青山杉作、千田是也、滝沢修、松本克平、三島雅夫、加藤嘉といった新劇の各劇団の幹部も多く出演しているのも、後年の東映作品にはない現象である。