これは、1975年に行われた「阪妻映画祭」で上映された折に観た1本だった。大映の「王将」との2本立てだった。
何でも二大スターである阪東妻三郎と大河内伝次郎が共演した唯一の作品でもあるという。
残念ながら、前後篇を1本にまとめて話の筋がわからなくなった「総集編」という形でしか残っていないようだ。また「怪傑紫頭巾」と改題もされている。1953年に妻三郎が死去した折に、東宝が今の形にして追悼番組にしたようである。ファンからすれば、オリジナルの形で遺して欲しいと思うのだが、劇場の回転率からこういう措置になったのであろう。
概要は佐渡島の金山奉行が部下に横領の罪をなすりつけ、時の権力者と結託した。それを謎の人物、紫頭巾が大目付に協力して成敗するというものである。二大スターの脇を沢村国太郎と加東大介が兄弟出演している。マキノ正博監督を応援する意味もあったのかもしれない。市川春代、宮城千賀子、逢初夢子などが顔を揃えている。
原作は壽々喜多呂九平。企画は妻三郎が原作者の窮状をみかね、何とかならないかということから始まったらしい。そこは日本映画の父、牧野省三の縁に繋がる仲間の助け合いの要素があったようだ。今観ると何だと思われるかもしれないが、昔懐かしい時代劇のフォームを見るには適した作品と思う。姿形のいいこと、今の俳優には望めなくなった何かがある気がする。