西河克己監督は鳥取県出身の人で松竹から移籍してきた人である。後年、吉永小百合を育て、アイドルの山口百恵の映画の多くを撮った監督である。この作品はこの二人が出現する前の西河監督の初期の作品である。
原作はノーベル賞を受賞した川端康成の同名小説。
さて、映画は前後篇に分かれているが、一挙に公開されたようである。インターミッション入りの長編くらいの感じだろう。しかし、それにしても登場人物は全て煮え切らない人間ばかりで一向に前向きではないので、観ていてため息が出てしまう。やや映画が滞留したような感じがする。女優は日活が揃えられるだけの女優(月丘夢路、新珠三千代、左幸子、芦川いづみ)がほぼ出ているし、新劇の演技達者たちも出ているのだが、一向に唸らせてくれない。出版社経営の滝沢修扮する社長が資金繰りに行き詰まって失踪するなんてところから、一体どうなっているのかと思ってしまう。
ただ、やっと復興した東京の表と裏を活写している点は貴重だろう。当時からホームレスへの対策がとられていたのも興味津々の情景ではある。