山本監督としては初めてのカラー・スコープ作品ということになる。東宝争議以来、独立プロ中心に苦しい台所で映画製作してきたが、本作では松竹の資本下で製作されたものである。
木下順二の同名戯曲を映画化したものだが、舞台でも当り役であった中村勘三郎を映画主演させて、歌舞伎流布を狙ったものかもしれない。内容が反権力的な内容であったので、山本監督の起用となったようである。女性が実は強いという面と権力のない庶民のしたたかさも描かれている。話の内容はアラルコンの「三角帽子」に似ている。権力の象徴を身につけているとその威光をきて、好き勝手する権力者が実力がないということも。
主張がオブラートに包まれて楽しめる映画になっている。全ては最後の台詞に集約されている。
なお、この戯曲は大栗裕によってオペラ化されていて、その録音も存在する。また「三角帽子」の方は、ファリャによってバレエになっている。