これは1960年5月29日から6月7日にかけて、ウィーンの楽友協会大ホールで、クレンペラーが手兵フィルハーモニア管弦楽団を率いてベートーヴェンの交響曲全曲と3つの序曲を演奏した記録である。初日の日はワルターがウィーン・フィルを振った演奏会も同じ会場で行われていたという。(「告別演奏会」でライヴ盤も出ている。)
さて、今回Altusからリリースされたものを入手して聴いてみた。実は他のレーベルから様々な形で出ていたが、モノラルの放送音源ということで躊躇していた。Altusはその中で放送音源を比較的いい状態で出してきたレーベルだったので、思い切ってみた。
モノラルであっても、たいへん明瞭に音が聴こえる。しかも程良い緊張感の中で音楽が展開するので、聴いていてワクワクさせられる。セッション録音とは何か違うものを感じる。語彙力ないので的確な言葉が浮かばない。レコーディング・オーケストラとして立ち上がったフィルハーモニアだが、いいアンサンブルをしているのだ。
かつて「エグモント」序曲のリハーサル映像が店頭で流れていて、クレンペラーがフィルハモニアのメンバーに向かって、「何故言った通りできないのだ!」と叱りとばしていたが、それはウィーンのこの演奏会のものだったことを知った。いや、おっかない爺さんだなと思ったものだ。ようやくいつのものか分かり、すっきりした。