先日、CSの日本映画専門チャンネルで放映された作品。「蔵出し映画」というところで取り上げられて、放映に先立って、評論家の佐藤忠男氏のコメントが入る。公開当時、あまり目立なかったとの指摘がある通り、忘れ去られた作品の一つのようだ。自分も今回その存在を初めて知った。
中味は大企業礼賛に終始して、いささか居心地の悪いものがあった。出てくる会社「大芝電気」で明らかに「東芝」がモデルとわかる。電気だけでなく、インフラやレコード制作の部門を擁していた点で同社そのもの。大企業で代々就職して、それなりの功を遂げた一家が主人公で、あまりのべったりぶりで、今観ると少し困惑する。ただ、当時「昭和元禄」と呼ばれた時代の雰囲気はよく伝わってきて、それはそれで貴重な作品と云えるだろう。ただ、今の東芝を知ると内容がいささか空しく感じる。誰が「経営再建中の」という枕詞がつく会社になると想像し得たか。却って旧作を鑑賞する醍醐味みたいなものを感じた作品でもあった。