灰とダイヤモンド」を観る。午前十時の映画祭の1本。この映画はポーランド映画ながら、結構テレビ放映もあったりして、子供の頃から知っていた。ただし、最初は何のことかまったく理解できず、退屈な映画という程度だった。次第にいろいろなものを読んだり知ったりすると、アンジェイ・ワイダ監督はかなり思い切った内容の映画を撮ったようだと感じた。映画の舞台はポーランドの地方都市。ドイツが降伏して戦争が終わったばかりの頃。正確には1945年5月8日及び9日。共産党幹部の暗殺を狙うテロリストたちの話。これはこの当時のポーランドの政治情勢が背後にある。主人公たちはロンドン亡命政権の手先。
監督は1958年当時で共産党体制に複雑な思いを持っていたようだ。下手をすれば体制批判で難しい立場に追い込まれたのではなかろうか。50年代、スターリン批判、ハンガリー動乱といった具合に「東側」の体制の変容が影響しているのかもしれない。ラストシーンはかなり惨めな画面だ。テロリストたちの無意味さを表しているということで評価され、検閲もパスしたが、監督は主人公に同情することを望んだと云われる。今はそういう観客が多いのではなかろうか。