数々の名作を放った脚本家の橋本忍氏が亡くなった。100歳。先日亡くなった木下忠司氏が102歳だったから、お二方とも長寿であり、まさに天寿を全うされたといっていいだろう。新聞記事にはその代表作が掲げられていて、また他の方のブログにもるる語られているので、繰り返すとそれこそ屋上に屋を架す状態になってしまう。
ネットで調べると、1954年に並木鏡太郎監督が新東宝で製作した「大岡政談妖棋伝」(前後編)や1955年に滝沢英輔監督が日活で撮った「初姿丑松格子」といった時代劇のシナリオも担当とこういったプログラムピクチュアも担当していたりしていた。また、テレビ映画「非情のライセンス」なんかも初期エピソードなどを担当、重厚な大作だけではもちろんなかったのである。しかし、そういう作品群も面白かった。理路整然としたストーリー展開であるからだろう。
1956年には八海事件を扱った「真昼の暗黒」(今井正監督・現代プロ)を発表している。大手五社が配給を渋り、最高裁が公判に影響するとして問題視した作品。生前の今井監督が座談会で、自分よりもシナリオの橋本氏が積極的で企画を牽引していたことを語っていた。この人の熱血漢ぶりが垣間見られる話だと感心したものだ。
あの世というものがあれば、かつての仲間が出迎えていることであろう。たくさんの名作をありがとうという言葉を捧げたい。