金田一耕助のシリーズは、古いものは片岡千恵蔵のシリーズ、近年では市川崑監督作品をはじめとした原作に忠実なキャラクターで描かれたものが有名。今は後者のイメージが定着しているようだ。かつては風采のあがらない主人公では受けないだろうということで、格好いい探偵になっていた。千恵蔵のものがそうだったし、この高倉健もスポーツカーで登場して、警視庁の嘱託mしている敏腕の私立探偵といった感じだ。
今となっては1977年の市川作品との比較になってしまう。市川版はおどろおどろしい感じだったし、犯人も哀れな感じだったが、この高倉健主演の渡辺邦男版は原作をかなり改変している。唄は被害者の一人となった地方の有力者の娘が東京でスター歌手になって、テレビの歌番組で披露する設定になっている。犯人もかなり異なっているので、横溝の世界とはかなりかけ離れていて、別の物語だ。渡辺邦男監督は早撮りの名手ということで、こういうのは一週間以内に撮影を済ませたのではなかろうか。おどろおどろしさは後退し、単なる謎解き話になっているが、話の半ばでだいたい犯人の予測がついてしまう。まあ高倉健の格好よさをめでるのが一番といったような映画だった。美空ひばりの実弟・小野透が珍しく姉との共演ではなく単独で出ているのが珍しい。