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雪之丞変化~午前十時の映画祭

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 午前十時の映画祭も8回目になるようだ。最近は邦画作品も組まれている。今回も市川崑や黒澤明、小津安二郎の作品が組まれている。4Kのデジタル方式による上映で本来のいい状態で観られる。市川作品は「雪之丞変化」で作品自体は以前記事にしている。
 
 今はこの作品はBDにもなって販売されているが、こういう古色蒼然とした映画をデジタル方式で観るとは思いもよらなかった。映画館のスクリーンでは今回も含めて3回観ている。最初はフィルムセンターで確か「長谷川一夫作品特集」という企画。当時新たに収蔵されたばかりの頃で状態は良かった。次は市川崑監督作品特集を名画座でやっていたが、褪色はさほどでもなかったが、コマ飛びのあるプリントだった。そして今回のデジタル上映。大映マークに先立ってソニー4Kデジタルのロゴが出る。色は幾分落ち着いたもので、やや暗めのトーンだった。大映カラーの独特の雰囲気で、東映の人工的なカラーや東宝のカラーとも違う。市川崑監督自体が発色にも拘る人だったから、余計に際立っていたのかもしれない。「おとうと」では銀残しという手法でカラーとモノクロの中間を狙ったような色合いだった。これは80年代になると「幸福」でも応用されていた。
 
 話は古色蒼然としたものを市川崑監督らしい味付けでリメイクしたもの。長谷川一夫はそのやり方に戸惑いがあったのか、監督の進め方に不満があったようだ。当時の映画雑誌にはユーモアが不足していて、まだまだ欧米作品に及ばないと批判しているインタビュー記事が載っていたのを目にしたことがある。長谷川一夫は大の洋画ファンでかつ大映の重役でもあった。役者の我儘とどう折り合いをつけたのだろうか。長谷川一夫もやはり市川監督の世界に組み込まれた感じはした。暗闇で刀と刀が渡り合って火花が散るといった演出や、画面の隅に小さく人物が映ったり、俯瞰で人間がうごめくようにして移動する様などはまさしくこの監督独特のもの。これを旧作の1935年の衣笠貞之助監督作品を知る人は大いに戸惑ったことだろう。余計なことをするな、とぐらいのことは思ったかもしれない。残念ながら1935年版は総集編版しか残っていないので、何とも云えないが、オーソドックスに作っていては面白くないと思い、こうなったのだろう。冒頭、東海林太郎が歌う主題歌がほんのさわりだけ流れるが、以後まったく流れない。タイトルは音楽のないまま芝居進行のうちに出てくる。そして最後、徳川夢声のナレーション。ラジオで「宮本武蔵」の朗読などで有名な人で、元活動弁士で俳優もした人だ。たった数分のナレーションながら、そのうまさには惚れ惚れとする。後は中村鴈治郎の貫録。これらだけでもこの作品は観る甲斐はあると思っている。

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