東宝の怪獣特撮もので有名な本多猪四郎監督による教育映画である。上映時間はわずか43分。学校での映写を前提の作品かと思われる。資料には1956年4月18日とあるから、通常の劇映画との抱き合わせで公開されたのかもしれない。本多監督としては本拠地で「空の大怪獣ラドン」を撮る直前という頃だ。
この作品は観客である子供の道徳の教唆もあるが、学生の映画製作の実習ということもあって、二重に教育目的なのである。出演者には日大芸術学部のOBである宇野重吉や小林桂樹なども出ている。話は同じ机を使用する昼間の中学生生徒と夜間に勤労しながら学ぶ生徒の文通が主体になる。双方の偏見がやがて友情に変わる様が短いながら要領よくまとめられている。まだ、人情などが色濃く残っていた時代ということもあって、他人のことを思いやる心が強いようだ。たとえば電車で幼い女の子が大事な毬を転がしてしまいわからなくなってしまったのを乗り合わせて客たちが探して手渡す場面があったりする。それに主人公の一人が遭遇して、相手を思いやる心を学ぶのである。全てが善意の人ばかりが登場するので、筋は複雑ではない。シナリオの担当は今井正監督とよく組んだ水木洋子。撮影はこの当時山本薩夫監督の組のキャメラマン前田実が担当している。こういう人たちもこの大学と縁があっての参加かもしれない。