1930年5月に公開された初期トーキー作品。ちょうど、不況を梃子にナチスのヒトラーが政権の中心に辿りつこうとした時期にあたる。まだ1930年時点では、言論の自由があったのである。資料によるとナチスの連中は、アメリカで製作された「西部戦線異常なし」とともに上映妨害をしたという。
話はフランスの戦線に配属された4人の将兵。時折、それぞれの家庭事情が挿入されて、帰宅すると妻が不倫行為をしているのに気付き、言葉を失って戦場に戻る者もいたりする。最後はたいへん救いがない。沈着冷静な少尉は発狂し、部下の3人の兵士は戦死してしまう。病院で敵の死体にもうお前は敵ではなく仲間だという発狂の少尉が叫ぶところで唐突に終わる。しかも、その「終」とではなく「Ende?」という衝撃的な幕である。これは終わりではないというパプスト監督のメッセージは強烈で、今跋扈しているナチスの連中への危うさを告発しているように受け取れる。3年後ヒトラーが首相になると、パプストのこの作品は上映禁止となり、多くの映画人がドイツを去って、ハリウッドへ移ってしまうのだ。彼らによってハリウッドの作品に重厚さが出てきたという副産物が付いたのだと理解している。
この状況は今の世界に蔓延している極端な国家主義の流れに似てなくもない。これは我々にとって警鐘的な作品に映って仕方がない。