17世紀後半のロシア史に基づいた重厚な歌劇『ホヴァンシチナ』は、作品の完成を待たずにムソルグスキーが世を去ってしまったため、リムスキー=コルサコフやショスタコーヴィチ、ストラヴィンスキーらが補筆したスコアで演奏されるのが一般的です。
ムソルグスキーをこよなく愛したアバドは、この作品の映像化にあたっては、ショスタコーヴィチとストラヴィンスキーの編曲版を用い、納得の行く物語を見せてくれます。何と言っても主人公を歌うギャウロフが素晴らしく、またキルヒナーの演出は、複雑な粗筋を実に明解に見せてくれます。(ARTHAUS MUSIK)
【収録情報】
● ムソルグスキー:歌劇『ホヴァンシチナ』全曲
イヴァン・ホヴァンスキー公/ニコライ・ギャウロフ(バス)
アンドレイ・ホヴァンスキー公/ヴラジーミル・アトラントフ(テノール)
ゴリーツィン/ユーリ・マルシン(テノール)
フョードル・シャクロヴィートゥイ/アナトリー・コチェルガ(バリトン)
ドシフェイ/パータ・ブルチュラーゼ(バス)
マルファ/リュドミラ・セムチュク(メゾ・ソプラノ)、他
スロヴァキア・フィルハーモニー合唱団
ウィーン少年合唱団
ウィ-ン国立歌劇場管弦楽団&合唱団
クラウディオ・アバド(指揮)
演出:アルフレート・キルヒナー
収録時期:1989年
収録場所:ウィーン国立歌劇場(ライヴ)
これはかつてLDで発売されたこともあるソフトだったかと記憶している。四半世紀も前の映像なので、画質の劣化はあるものの、鑑賞には全く問題がない。むしろムルグスキー・フリークとして有名だったクラウディオ・アバドの指揮ぶりに接することができる貴重なものである。演奏も名演と呼べるものではなかろうか。同じショストコーヴィチとストラヴィンスキーの版の折衷ものはケント・ナガノがバイエルン国立歌劇場のアンサンブルを振ったものも手許にはあるが、演奏はこちらの方に分があるような感じはする。VPOの母体のウィーン国立歌劇場のオケから迫力ある音を引き出すところはやはりアバドは第一級の指揮者であり、ムソルグスキーへの敬愛も感じられる。