1972年に開催された札幌オリンピックの記録映画。当時は高校受験直前であまり競技は熱心には観戦しなかったが、それでもジャンプで1~3位を日本勢が占めたのは興奮したのを思い出す。ここでも東京オリンピック同様に競技の単なる記録に終始せず、人間として姿を描こうという意図は見てとれる。あまりの寒さに昭和天皇が開会宣言する時に、口が動かないようなところもしっかり記録されている。ただ、市川作品である「東京オリンピック」よりもやや平板に思えるのは、種目にあまり近しいものを感じないということがあるのかもしれない。
再見してちょっとした発見は音楽を佐藤勝が担当している点だった。当時は黒澤組を外れて、山本薩夫監督や山田洋次監督の作品を主に担当していた。「戦争と人間」のシーン音楽の転用があるし、この映画の音楽から「皇帝のいない八月」のタイトルバック音楽になった素材があったりして、こういうことはよくあることなのだと改めて確認できた。