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マクスウェル・デイヴィス:交響曲第10番、パヌフニク:交響曲第10番 パッパーノ&ロンドン響

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【収録情報】
1. マクスウェル・デイヴィス:交響曲第10番 op.327『アラ・リチェルカ・ディ・ボッロミーニ』 (2013-14)
 録音時期:2014年2月2日(世界初演) マルクス・ブッター(バリトン)
2. パヌフニク:交響曲第10番 (1988)
 録音時期:2014年10月19日
アントニオ・パッパーノ指揮 ロンドン交響楽団・合唱団


「LSO Live」の新譜は、現代イギリスを代表する世界的な作曲家のひとり、ピーター・マクスウェル・デイヴィスの交響曲第10番。80歳の誕生日を作曲者が迎える2014年2月におこなわれた世界初演時の模様をライヴ収録したもので、指揮はこれが「LSO Live」初登場となるアントニオ・パッパーノが担当しています。
 作曲者自身「わたしの書いた作品のなかで、もっとも激しい音楽」と述べるこの曲は、17世紀に実在した建築家フランチェスコ・ボッロミーニの物語を描いた演奏時間42分ほどの作品。イタリア・バロックを代表する建築家でありながら、ボッロミーニは特異な建築であまたの批判に苦しんだ末に、不幸にも自殺を遂げています。ちなみに、マクスウェル・デイヴィスがこの人物をテーマにするのは2度目で、前回2001年から2007年に作曲された弦楽四重奏の連作10曲のうち、『ボッロミーニに寄せるメタフォーレ』と題された第7番でも取り扱っていましたので、その思い入れの深さも窺い知れるところです。バリトン独唱と合唱を擁し、オラトリオやカンタータを思わせるこの交響曲でも、ボッロミーニの建築理念と数学的原理が全曲に浸透し、創造性、生と死、そして再生について語られます。
 ロンドン響、ローマ聖チェチーリア国立音楽院管、チャイコフスキー記念交響楽団による共同委嘱作品として作曲された交響曲第10番ですが、指揮のパッパーノといえば聖チェチーリア国立音楽院管現音楽監督。もともとロンドン出身で、2002年に就任したロイヤル・オペラ・ハウスの音楽監督の活動と並行して、ここ毎シーズン登場して好評を博すロンドン響とはすでに20年来の親密な間柄となれば、ここで初演の大役を果たすにふさわしいのは、このひとをおいてほかにいないでしょう。パッパーノは作品と作曲者について次のように賛辞を寄せています。
「マックスがこの作品について説明したときに、私はそのドラマティックな内容にとても強く引きつけられました。かれはこの曲の大部分を病院で書きました。白血病と診断され、長期間治療を受けていたので、曲はとてつもない哀愁が強烈に漂い・・・作品に知識の持つ力と確信をもたらしているのです。」
 この言葉のままに、作曲者が込めた迫真のメッセージに対するパッパーノの熱い共感が伝わるこのアルバム。現時点で本作品の唯一のレコーディングとなります。
 カップリングは、アンジェイ・パヌフニク作の同じく交響曲第10番。こちらはマクスウェル・デイヴィスの世界初演より8か月あまり、2014年10月のパヌフニク生誕100周年記念コンサートにおけるライヴ・レコーディングとなっています。
 母国ポーランドから亡命、1991年に世を去るまでのほぼ半世紀に亘る後半生をイギリスで終えたパヌフニクは、生前からロンドン響にとってゆかりの深い作曲家であっただけでなく、現在も、楽団はカミラ未亡人の協力のもと「LSOパヌフニク・スキーム」を通じて、毎年有望な若手作曲家6名を選出して作品発表の機会を設け、偉大な作曲家の業績を特別に讃えていることで知られます。
 シカゴ響創設100周年記念委嘱作として、1988年に作曲された交響曲第10番は、パヌフニクのほかの数多くの作品と同様に、独特の簡潔な表現が特徴的で、この場合にはフィボナッチ数列ですが、幾何学の影響を受けています。さらに、その人間性と激しくも奥深い音楽の才能とを伝えるため、パヌフニクが配分した、グループ化されたさまざまな楽器の組み合わせによって、極上のサウンド・クオリティを獲得しているのも、この交響曲の魅力。全曲は4つのセクション(ラルゴ-アレグロ・モデラート-プレスト-アダージョ)に分かれていますが単一楽章形式により切れ目なく演奏されます。不穏なブラスの咆哮で幕を開ける、この交響曲の最初の部分は、ある種の嘆願の性格を持つもの。続く瞑想的性格のセクションはクライマックスへと次第に高まりつつ、突如、打ち切られ、弱音の弦の振動のみが残ります。その後、祈願するようなセクションが現れ、消え入るように閉じられます。(キングインターナショナル)


 これは前からLSOのFacebookの記事で初演の模様が再々紹介されていたものである。マクスウェル・デイヴィスの交響曲は第6番までが自身の指揮でナクソスから出ているが、それ以降は録音がない。そこへ新作の初演の報。やはりロンドン交響楽団はその自主製作盤でリリース。イギリスに帰化したパヌフニクの、やはり交響曲第10番とカップリングするという小粋なことをやってくれた。

 上の発売元のコメントにもあるようにデイヴィスの方は声楽を伴うカンタータのような作品。どうもイタリア語のようだ。4つの部分の内、第2部と第4部にバリトンの独唱と混声合唱が入る。今は英訳の詩を読むのも億劫だが、聖書ではなさそうである。音楽は相変わらず難解なところもある。編成は大きく特殊楽器を多く要求される。コントラバスクラリネットといった吹奏楽ではみかけるが管弦楽では滅多にみない楽器まで使われている。そのクセ最後は静かに終わるので、いつのまにか済んでいるといった感じ。パヌフニクの方もそうである。演奏する方はこういうのが却って難しい。ライヴながら拍手は入っていない。

 


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