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決戦攻撃命令(メルヴィン・フランク、ノーマン・パナマ)(MGM1952年)

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決戦攻撃命令 [DVD]
 
 本作は1952年の大晦日に本国で公開されたもの。日本公開は1961年1月10日とある。すぐに公開されなかったのは、原爆が関係していると思われる。1953年当時はまだそうした題材が憚れるという雰囲気があったろう。もっとも「長崎の鐘」「長崎の歌は忘れじ」「原爆の子」「ヒロシマ」と結構日本側は映画を製作されているが、落とした方のアメリカの映画はアメリカ自体が許さなかったのかもしれない。
 
 これは広島に原爆を投下したエノラ・ゲイの機長、ティベッツ大佐が主人公。最初は北アフリカ戦線でドイツ軍に空襲を行っていたB-17の機長。実績を買われて新型のB-29のテストパイロットとして本国へ戻るところから話は展開する。物語は妻の回想という形式。1945年のワシントンの空港に夫を出迎える折の思い出として語られる。戦争映画ではあるが、あまり戦闘シーンはない。ドイツ兵も日本兵も画面には出てこない。激しい訓練と原爆攻撃に関して厳重な秘密保持の様子が描かれる。家族にも秘匿しなければならない。妻が罪もない子供たちが爆撃などで殺されているというと主人公は色をなして怒る。爆弾投下で人が大勢死んでいると思うと気が重いと上官には心情を吐露するも気にしないことにしていると言う。その痛いところを突かれるので忸怩たる思いがあるのだろう。戦争を早く終結するためのもので、50万人のアメリカ兵の命を助けるのだ。しかし、市民10万人が死ぬことになるという台詞はやはり日本人としては納得がゆかないものを感じる。
 
 映画では本国の訓練からいきなり原爆投下になるが、模擬爆弾を使って空襲で実地訓練していたということは抜けている。「エノラ・ゲイ」も東京や大阪の空襲に参加していたのではと思ったが、この映画は違っていた。
 
 さて、原爆投下は50万人の命を救うなんていう目的ではない。これは壮大な人体実験である。しかも、自分らと同じ白人のドイツ人ではなく、黄色人種の日本人だから気が楽であったこと。それに戦後対立が予想されるソ連への隠し玉として有効という冷徹な政治的思惑もある。しかし、映画はそういうことは当然触れていない。また「マンハッタン計画」には多くのソ連のスパイやシンパがいて、スターリンには筒抜けだったようだ。

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