以前、この指揮者の評伝を読んだことがあった。その本は指揮活動に焦点はあてていたが、録音評は一切なかった。彼はチェリビダッケほどの徹底した録音嫌いではなかったが、録音という営みにかなり非協力的な指揮者ではあった。
本領はコンサートであり、一度も来日はしていないので、我々は録音などにどうしても頼るしかない。それでもライヴ録音が発掘されたり、中にはコンサート映像が出てきたりして、魅了される人は多い。遅いテンポでしかも一旦始まるとずっとそのテンポを保持してゆくところなどは、何か動かない大きな存在を感じさせるのである。
上の写真はVPOとの録音風景であろうか。中にはポピュラーな小品まで録音しているが、その中に十八番があったりする。またチャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」はとても好きだったとも伝えられている。ワーグナーやブルックナーだけでは当然ない。評判のブルックナーは今は滅多に演奏されない改訂版で演奏していた。今更新しく出版された原典版をやるつもりなどないというのは、この人らしい頑固な一面を示すもので面白い。