実際の少女の作文を基にした児童映画である。作品も監督も今では忘れられたようなところはあるが、東京オリンピック開催直前の東京の風景や庶民の生活が描かれていて、貴重な作品ではある。どちらかというと東映児童映画がやるような内容だが、松竹にもこうした作品があったのだ。
大人の俳優は母親に乙羽信子、父親が下條正巳の他、三上真一郎、長門勇、中村雅子といった面々が出演しているから、キャストはしっかりしているようだし、水川監督もデビューで定石通りの演出のようではある。子役も現在のアザトい演技はないが、やや不自然な感じも残る。同級生の男子が遠くに行くあたりは、日活の「キューポラのある街」みたいではあるし、作文が基というのはやはり日活の「にあんちゃん」に似ている。偶然にも今村昌平監督が関与したものであるのが、妙な発見めいたものを感じた。