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不信のとき(大映東京1968年)

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不信のとき

 今井正監督は東映を経て、2本ほど大映で作品を撮っている。この「不信のとき」は2本目にあたる。大映得意の風俗ものだが、ここでも半ば冷めた目で登場人物を観察しているふうだ。しかもかなり意地悪くみているような感じがする。どの人物にも感情移入していない今井作品独特のものだ。社会的な矛盾を指摘するようなところはかなり後退しているが、会社の派閥争いとか、男性が女性をどうみているかも、今となっては昔といった感じではある。映画のクレジットには原作者とならんで「日本経済新聞」と出ていたから、文化欄に連載されたものであろう。

 さて、この映画は田宮二郎が大映の永田雅一社長に馘首を言い渡されたきっかけになった作品である。俳優名の序列について、不平を漏らしたところ、役者ふぜいが口を出すことでないとの理由で解雇になってしまった。今にして思えば、高給取りのスターをどうやって、縁を切るかということに躍起になっていたのかもしれない。しかし、そうやって放逐したは良いが、看板スター・雷蔵の死などで会社が傾いていったのである。なかなか厳しい現実ではある。

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