ここのところ相次いで亡くなった高倉健と菅原文太は共に東映の看板俳優だった。二人とも任侠映画のスターとの表現があるが、肌合いは全く異なるような感じがする。
高倉の方は、まさに任侠映画でスターだった。フリーになった後も寡黙な印象が強い。それから晩年になってプライベートは一切明かさず、世間と断絶したような感じだった。珍しくテレビ朝日の「SMAステーション」の生放送に登場した折も、オフの時は何をしているのか、という問いにも、教えませんと言うだけだった。人見知りの強い人だったようだが、気を許した人にはよく話しかけていたという。
一方菅原の方は、任侠スターとはやや違う。確かに任侠映画にも出演していたが、それらは脇役が多かったように思う。東映が任侠ものから実録ものに路線を変えた時に、スターになったという感じだ。もっとリアルな感じで本当に義理人情の世界とは無縁の世界の住人というイメージではあった。トラック野郎シリーズといったコミアルなものもあったが、恐い感じのキャラクターである。その実録ものも終焉すると、やはり東映を離れる。そして、逆に落ち着いた役柄が多くなる。市川崑監督の「映画女優」では巨匠・溝口健二監督をモデルにした映画監督役を堂々と演じていた。他に一見恐そうな感じだが、実は優しい老人なども演じていたように思う。役者は引退したが、逆に社会に向かって積極的に発言する姿を見ると、本質的にインテリだったなと気づかされる。
昭和一桁までの生まれの俳優さんたちは、たいへん個性的な人が多い。まだ何人かは現役で頑張っておられるが、こうやって続け様に訃報に接すると「昭和」が一段と遠く感じて寂しい。