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妻二人(大映東京1967年)

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妻二人
 
 パトリック・クェンテンという作家の原作を新藤兼人が翻案してシナリオを書いたものを増村保造監督が映画化したもの。
 
 「清く正しく」を理念とする女性雑誌を核ととした多角経営をやる社長一家の内実は、社是とは真反対の状態というのがまず背景にあるのがおもしろい。そして、元来小説家志望だった男が若い時に内縁関係だった女性と別れ、社長の長女の婿になるというところから始まる。偶然に元の愛人と再会、まだ彼と同じような男を養っていることを知る。その男は妻の妹に近づくが、姉は反対して別れさせようとするが、逆に脅迫されて、全ての関係者の運命が狂っていく。ミステリー風のメロドラマである。
 
 増村監督は若尾文子の魅力を十分に生かしながら、スピーディに物語を運ぶ。若尾に対抗して同い年の岡田茉莉子を起用して、対抗させるというのは豪勢な配役である。その二人の女性の間を右往左往する男が高橋幸治。大河ドラマ「太閤紀」の信長役でブレークして、まだその余勢がある時期。ここでも頼りない男ではなく、冷静な男性である。最後は社長である義父に反抗して新しい生活に入っていく。狡猾で悪の作家志望の男を伊藤孝雄、若尾の妹役を江波杏子、姉妹の父でワンマン社長を三島雅夫が扮している。社長が本当は乱脈なことをやっているから、コーポレート・ガバナンスが体をなしていないことがドラマで語られる。この会社がどうなるかまでは描かれてないが、今の世であれば、間違いなく破綻するだろう。

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