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Channel: 趣味の部屋
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混血児リカ ハマぐれ子守唄(オフィス203・近代映画協会1973年)

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 この映画は吉村監督のフィルモグラフィで題名だけは、以前から知っていた。キネマ旬報でその記事が取り上げられていて、原作は漫画であることもわかっていたが、なかなか観る機会のない作品ではあった。ようやく、観たがそれまでの吉村作品とはまったく異なるものであった。
 
 吉村監督というと芸達者な俳優が揃って、ケレン味たっぷりの大芝居を展開するというイメージだったが、これはほぼ素人同然の人たちばかりで、ここで様子が全く違う。キャメラマンなどは「こころの山脈」でも組んだ記録映画出身の杉田安久利が担当、脚本も長年のコンビを組んだ新藤兼人といったスタッフが揃っている。むしろ、新藤の関心がこの企画を成立させたのだろうか。
 
 その契機にはなったのは何だろうか。底流には混血児問題と基地問題なのだろうと思う。これは既に今井正監督が「キクとイサム」という名作を送り出している。それをもっとわかりやすく劇画を素材にして、やろうということだったのかもしれない。実はこれより先に中平康監督によって2作先行して製作、吉村監督は最後の3作目を担当したという形である。一度病に倒れて、「こころの山脈」で復活、かつての仲間の新藤兼人が主催する近代映画協会で数本監督したり、テレビで時代劇作品を撮ったりしていた時代だ。まだ本調子ではないような気がする。そして、自らの企画「襤褸の旗」の製作に挑むが、それが映画での遺作になってしまった。

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