1974年9月14日に公開された東映オールスターによる戦争大作である。特攻の創始者・大西瀧治郎を主人公に置いたもので、この7年前に東宝で製作された「日本のいちばん長い日」を別の視点から描いた作品でもある。上映時間は3時間超で途中にインターミッションが入る。
さて、製作にあたって児玉誉士夫の協力を得ていて、児玉自身も登場人物の一人として描かれている。どちらかというと右翼的視点というのが特徴といったところか。皮肉にもこの2年後にロッキード事件が発覚して、児玉は被告の立場になってしまうから、実際の方がドラマティックなことになっている。
映画は公開当時からあまり話題にもならず。協力者が被告になった関係か再上映される機会はあまりなかったように記憶している。ビデオが普及した後、旧作の発掘の形でソフトが流通するに及んで観られる機会が増えたのではなかろうか。既にロッキード事件も風化しているので問題視もされなくなったということか。
描写は東映が従来製作してきた任侠映画の手法なというのが愛嬌といったところか。オールスター映画であるから、エピソードの端折る感じがして描写は浅い。東映の悪い傾向が既にこの映画に現れている。筋だけを追うという映画になってしまった。もう少し大西という人物を深く描いて欲しかった。映画は英米と戦端を開いた後だけが描かれているが、彼が海軍入りしてからを丹念に描くべきではなかったか。彼が中国での無差別爆撃に関与していたことは不都合と製作者は思ったのだろうか。ニュース映画の引用で割とドキュメンタリー的な要素も狙っているようで、そのあたりを深化すれば良いのに、残念に思った映画である。