新演技座というのは、長谷川一夫や山田五十鈴が中心になって設立された劇団である。戦後、映画制作のための会社になるも、経営が思わしくなく1952年に解散している。長谷川は東宝から新東宝に移籍して、この劇団の末期には大映に入社して、後に同社の取締役まで務めていた。そういう過渡期の作品である。ここでは戦前から度々組んでいた衣笠貞之助監督を得て、「鳴門秘帖」を素材にした作品を手掛けたのが本作。タイトルには「第一部」と表記されているが、どうも続篇は作られなかったようだ。テンポが遅く、なかなか話の展開が進まない印象が強い。これからが本番というところで「終わり」となる。何だか欲求不満になってしまう。8年後、今度は吉川英治原作の映画化を本格的にやはり長谷川一夫主演で撮っている。今度はどんどん話を省略していて、何だがダイジェストみたいになって、もう少し何とかならないのかと思ったものである。中間がちょうどよいのだが、なかなか難しいものである。
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