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大東亜戦争と国際裁判(小森白・新東宝1959年作品)

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大東亜戦争と国際裁判.jpg
 資料によると1959年1月3日公開となっている。この日は各社正月映画として一斉に作品を封切っているが、本作品はもっと早く公開の予定が脚本の執筆の都合で年を越したとのことである。新東宝の俳優をほぼ全員使った上に新劇畑や外国人タレントも起用した大作になっている。最初に当時の社長・大蔵貢が「総指揮」という名目でクレジットされている。この段階で新東宝はかなり末期の頃になるが、際物企画を次々発表していた頃だ。これも他社が手を出さない「東京裁判」が題材で、どんな仰天内容かと観てみたら、意外とオ-ソドックスな内容であった。後年、東映が制作した「プライド」よりも客観的だし、映画的にはこちらに軍配を挙げたい感じではあった。ただ、裁判前の戦争過程の描写がやや長いのが難点だった。むしろ裁判から入って回想形式で挿入という手もあったのではと思った。ただ、わかりやすくしたいという製作者の意図は十分伝わってきた。
 
 出演者の中には公募による素人が演じている役もある。吉田茂とか重光葵などがそれだそうで、よく似た人を起用したらしい。一方、どうしても外国人役があるのだが、キーナン検事は実際よりしょぼい感じがして、ヒステリックな演技になっていたのはいただけない。キーナンが日露戦争から説き起こしている部分があるが、それはソ連の検事がやったことで、連合国側でも顰蹙を買ったというが、そういったことは簡略化されていた。元満州国皇帝・溥儀が登場したのは良かったと思う。実は偽証していたことは後年知られているが、清瀬弁護士に相当やり込められている場面があった。一方、ウェッブ裁判長は地味。本当はソ連同様に強硬で天皇を有罪にしようと躍起になっていたのだが、そういうことは出て来ないのは物足りなかった。アラカンの東條は抑えた演技だったように思う。廣田弘毅役は民藝の清水将夫が扮していた。そういえば1976年のテレビ朝日のドラマで同僚の滝沢修がこの役をやっていたなと妙なことを思い出した。

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